作詞

「あなた」と書く?「貴女」と書く?歌詞での表記に悩んだら意識するべきこと

作詞をする中で、どんな感じを充てたらよいのか悩むことがあるかもしれません。「あなた」と書くのか「貴女」と書くのか。「地球」と書いて「ほし」と読ませるべきか・・・なんて永遠と悩んでしまう人も少なくありません。歌詞での表記について見ていきましょう。

基本は「ひらがなでどう聞こえるか」を意識

歌詞は基本的に「見る」ものではなく「聞く」ものです。そのため、「どう見えるか」よりも「どう聞こえるか」を意識するのが大前提です。聴き手の耳には、すべてひらがなで入っていくというイメージを持ちましょう。そのため、基本的には「表記で悩む必要はない」ということになりますが、実際はいろいろな表現が使われています。

歌詞の表記が粋な表現を生むことも。

例えば、椎名林檎さんの歌詞には難しい漢字が多用されていたりしますね。最近は歌番組などで歌詞を「縦書き」に記載してオリジナリティを出していることも多くあります。歌詞は基本的に耳で聞くものですが、歌詞カードや歌番組のテロップなど、歌詞を目にする機会も多少はあります。歌詞を見ながら聞いてくれる人は、アーティストのファンだったり、比較的「濃い」聴き手と想定されますね。その場合、アーティストの世界観を伝えるのに歌詞の表記にこだわるのは非常に効果的だと考えられます。
また、スキマスイッチさん「全力少年」の中にこんな歌詞があります。

1番
躓いて転んでたら置いてかれんだ

2番
遊ぶこと忘れてたら老いて枯れんだ

「おいてかれんだ」と聞こえるのに、実は2種類の表記で意味を使い分けています。こういった言葉遊びはとても粋ですよね。これも、聞いただけでは気づかない人も多いかもしれませんが、気づいた時の喜びが大きい部分です。

作詞家側から、「こう表記したんだからそのニュアンスを受け取って!」というのは少々要求しすぎというもの。あくまで、「気づいた人は楽しめるよ」といったサービス精神程度に考えておくのが良いでしょう。

ただし聞き間違いがないように。

歌詞の表記にこだわることで、粋な演出ができる反面、作詞家の意図と違う意味で受け取られてしまう危険性があることも意識しておかなければいけません。「空耳」として遊ばれる文化もあったりするのでそれはまた別ですが、できるだけ誤解を生まないように心がけましょう。
たとえば、「馬と船に乗ろう」という歌詞があったとします。馬と一緒に船に乗るのか、馬や船に乗るのかわからないですよね。
また、「愛してる、あなたに伝えたい」と歌った場合、「…何を?」という反応が返ってくるかもしれません。耳で聞いただけだと、「愛してるあなた」に何かを伝えたいのか、「あなた」に「愛してる」と伝えたいのかがわかりにくくなってしまいます。
このように、わかりにくさを生んでしまうことは避けたほうが良いでしょう。

「間違って聞こえる」ことを狙った歌

逆に「間違って聞こえる」ことを狙った歌もあります。
ZAQさん「VOICE」はアニメ「中二病でも恋がしたい!戀」のオープニングです。歌詞の中に作中の登場人物「六花(りっか)」「勇太」は歌詞の中には出てきませんが、まるで登場人物の名前を歌っているように聞こえるという歌です。

・Real come on voice ⇒ 六花ボイス、と聞こえる
・You touch voice ⇒ 勇太ボイス、と聞こえる

これも、歌詞を見て、聞いて、さらにアニメを知っている人にだけわかる仕掛けになっています。「気づいた人は楽しめるよ」といったサービス精神を感じますね。

まとめ

歌詞は基本的に「聞く」ものなので、必要以上に表記にこだわる必要はありません。しかし、歌詞の表記にこだわることで、さまざまなオリジナリティや楽しみ方を作ることが出来ます。歌詞の表記は、歌詞の中で「ストーリーを伝える」「意味を作る」以外の、「言葉で遊べる」部分。他にはない自分なりの表現を見つけてみても面白いかもしれません。

 

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